にほんのくらし 葉月
葉月の兆し 「蝉しぐれ」
夏の真っ盛りの林の中、皆様も一度は大音量の蝉のコーラスをお聞きになったことがあるのではないでしょうか?
蝉の声は夏の風物詩の一つで、中でも蝉たちが一斉に鳴きたてる声を時雨が降る音に見立てたのが「蝉しぐれ」という言葉です。
「時雨」は雨量は多くないけれど、一時的に雨脚強く降る雨のことで、本来は秋から冬にかけて降る雨です。
それで「時雨」は冬の季語なのですが、蝉がついて「蝉しぐれ」となると夏の季語になります。
「チーニー♪」とニイニイゼミが鳴き始めると、いよいよ夏の到来です。
アブラゼミの「ジージリジリ♪」や、ミンミンゼミの「ミーンミンミンミン♪」が聞こえてくると、夏の一番暑い時期で、これらは真夏の象徴ともいえる鳴き声です。
「シャワシャワ♪」と鳴くクマゼミは本来は西日本にしか生息していませんでしたが、最近は関東でも見られるようになりました。
ヒグラシの「カナカナ♪」の鳴き声は夕方が多いので秋のイメージがありますが、実は、まだまだ盛夏の暑さの中で聞こえます。
ツクツクボウシの「ツクツクボウッシ♪」やチッチゼミの「チッチッチッチ♪」が聞こえ始めたら、そろそろ夏も終わり、秋が近づいてきます。
ご存じの通り、蝉はその一生をほとんど土の中で過ごし、成虫になってからの命はほんの数週間位しかありません。
蝉しぐれの蝉の声は、蝉の短く儚い命の精一杯のメッセージのようで、煩いよりも愛おしく感じられます。
葉月の行事 「日本全国のお盆行事」
お盆の正式名称は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」で、インドのサンスクリット語の「ウラバンナ(逆さづり)」が由来です。
お釈迦様の弟子がお釈迦様に餓鬼道に落ちて逆さづりに苦しめられている母親を救いたいと相談したところ、お釈迦様が授けた教えは、旧暦の七月十五日に修行を終えた僧侶を集め、ご馳走を振舞い供養することでした。
このことから、7月15日は、父母や先祖を供養する大切な日となりました。
その「盂蘭盆会」が日本に伝わり、日本古来の祖霊信仰や農耕祭礼などと融合し、今日のお盆の風習となりました。
明治になり新暦が採用されると、この新暦の7月15日は農業では最も忙しい時期に当たることから、多くの地域で一月遅れの8月15日を「お盆」に変更し、現在ではこちらが一般的になりました。
代表的な「お盆行事」には、「迎え火・送り火」「精霊馬」「灯籠流し」「盆踊り」などがあります。
「迎え火・送り火」はお盆初日にご先祖様の霊を火や煙で迎え、お盆の最終日に同じく火や煙であの世に送り出す行事です。
「精霊馬」は、ナスやキュウリに割り箸を刺し、ご先祖様があの世とこの世を行き来するための馬や牛に見立て供えるものです。
「灯篭流し」は「精霊流し」ともいい、祖霊の魂を船や灯籠、提灯などに乗せ川や海に流す風習です。
「盆祭り」はお盆の時期に行われるお祭りの総称で、全国各地で様々な「盆踊り」があります。
現在の日本三大盆踊りは、秋田の西馬音内の盆踊り、郡上踊り、阿波踊り、ですが、日本各地で様々な形で発展し、全国で500を超える盆踊りがあるそうです。
日本全国で行われる盆行事を北から見ていきましょう。
北海道では盆踊りが盛んで、ほとんどが第一部は子供向け、第二部は大人向けの二部制で開催されます。
大規模なものとしては、札幌市の「さっぽろ夏まつり北海盆踊り」、三笠市の「三笠北海盆おどり」、岩内町の「復活北海盆踊り」などがあります。
東北地方の岩手県盛岡市では、北上川に遺影や戒名などを書いた札を貼った船を浮かべ、火をともして供養する「舟っこ流し」という行事があり、最後は灯籠流しを行います。
盆踊りでは青森県黒石市の「黒石よされ」という流し踊り、秋田の三大盆踊り(一日市の盆踊り、毛馬内の盆踊り、西馬音内の盆踊り)、などが有名です。
関東では、茨城や千葉に広くまたがるお盆行事の一つとして、子供たちが藁綱を曳いてご先祖様の霊を送り迎えする「盆綱」という風習があります。
栃木市の「百八灯流し」は、百八本のろうそくを灯した舟を巴波川に往来させ、百八の煩悩を水に流す行事です。
東京の「佃の盆踊り」は、櫓太鼓の音に合わせて櫓の周りを踊る念仏踊りで、東京都の無形文化財に指定されています。
中部地方の静岡県浜松市では、太鼓の音に合わせ念仏踊りをして、新盆を迎えた家を回る「遠州念仏」という行事があります。
岐阜の郡上市八幡町の「郡上おどり」は、7月中旬から9月上旬まで続く日本一のロングランの盆踊りで、日本三大盆踊りや三大民謡にも選ばれています。
北陸側では富山市八尾町の「おわら風の盆」が有名で、現在は二百十日の風の厄日の風神鎮魂を願う祭りに変化しましたが、元々は盂蘭盆会に行われていました。
福井県や石川県などで行われる「御招霊(おしょうれい)」は、「迎え火」の一種で、男性数人でやっと持ち上げられる位の大きな松明をそれぞれが持ち、大きく振り回して練り歩く行事です。
近畿では京都の「大文字焼き」が有名で、正式には「五山の送り火」といい、これもお迎えした祖霊をお送りする送り火です。
奈良の高円山にも同様の「高円山大文字送り火」という行事があります。
中国地方の広島安芸地方では、お盆のお墓に色とりどりの色紙を貼った盆灯籠を供えます。
四国では徳島県の「阿波踊り」が有名で、「四国三大祭り」、又「日本三大盆踊り」の一つとされています。
九州地方や、全国の川や海が近いところでは、送り火の一種として精霊流しが行われてきました。
長崎では県内各地で、盆提灯などを飾った精霊船に故人の精霊を乗せ、魂を弔って送るという「精霊流し」が行われます。
長崎の五島市では、掛と呼ばれる踊り手が帷子を身にまとい、腰蓑を付けて踊る「チャンココ踊り」という伝統的な念仏踊りがあります。
沖縄県の各地では、ご祖先様の霊を送迎すべく、若者達が囃子と唄に合わせて踊り、通りを練り歩く「エイサー」という行事が行われます。
石垣島には沖縄には仮面をつけた二人を先頭に民家を訪ね歌や踊りを披露する「アンガマ」があります。
その地方地方なりにどの行事も、お盆の時期にご先祖様を思い出し感謝する、供養の習わしです。
葉月の和菓子 「盆菓子」
お盆のお供えのお菓子といえば、白やピンクなどの蓮の花や菊の花などを模した落雁という干菓子ではないでしょうか?
落雁は中央アジアが発祥とされ、室町時代に中国から伝わり、日本の茶道と共に広がったと言われています。
落雁の材料は米などの粉に水飴や砂糖を混ぜ、型に押して固めて乾燥させた打ちものと呼ばれる干菓子です。
なぜお盆や葬儀にこの落雁が供えられるのでしょう?
その理由は諸説ありますが、前述の「日本全国のお盆行事」に書いたように、お釈迦様の弟子の目連がお釈迦様の教えに従い行ったご馳走のふるまい「百味飲物(ひゃくみおんじき)」が由来ではないかと言われています。
「百味飲物」は沢山の食べ物や飲み物ということですが、昔は甘い菓子などは大変贅沢な食べ物でした。
砂糖はなかなか手に入らない貴重なものでしたし、手に入ったとしてもとても高価な品でした。
貴重な砂糖を固めた落雁をお供えするということは、仏様や祖霊を大切にすることの証だったのかもしれません。
葉月の風呂敷の俳句
夏の夜に 風呂敷かぶる 旅寝かな 小林一茶
小林一茶が俳行脚の旅をした際の「寛政句帳」にある句です。
旅の途中の野宿も、夏の夜なら風呂敷一枚をかぶって寝ても寒くなかったのでしょう。
旅の荷物は全て自分で持って歩かなければならなかった当時、風呂敷はそれらを包み運ぶだけでなく、こんな風に敷物や上掛けとしても役立ったことがわかります。
文月のふろしきYoutube 「瓶包み」
瓶や細長いものをしっかり包み、持ち手があって持ち運べる包みです。
昔はお酒や油などは家から瓶を持参して、そこに入れてもらって持ち帰り、なくなると又その瓶を持って行く、というまさにサスティナブルな生活をしていました。
その瓶を包んで運ぶのにも風呂敷は役立ってきました。
1分で出来る風呂敷包み 「ふ、ふ、ふ、ふ、ふろしき~瓶包み~」
ふ、ふ、ふ、ふ、ふろしき!
つつんで、むすんで、おでかけ!(フー!)
瓶を それぞれ 左右に
倒して ゴロゴロ 転がし
立たせて 上で 真結び
きっちり 二本 仲良し
ふ、ふ、ふ、ふ、ふろしき!
つつんで むすんで おでかけ!
なんでもできる おどろき!
フロシキブルに ふろしき!(フー!)