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日本の衣食住
文月

七夕の織女星と織姫と棚機女

現在、七夕は「たなばた」と読んでいますが、本来「七夕」は「しちせき」という読み方のはずです。
「たなばた」という呼び方は、古来の日本の「棚機女(たなばたつめ)伝説」が由来だと考えられています。
日本には七夕の季節に、古くから伝わる棚機女(たなばたつめ)信仰がありました。
棚機女とは、稲の開花の頃、水辺の機屋にこもり衣を織り、神に捧げる乙女のことです。
この行事は出来上がった衣を棚に供え、その年の秋の豊作祈と村人の穢れの清めを神に祈るものでした。
この乙女が衣を織った機織り機が「棚機(たなばた)」と呼ばれたとも、機(はた)で織った衣を棚(たな)に掛けたので「棚機(たなばた)」という言葉が出来たとも言われていますが、どちらにしても、日本には棚機女伝説から「たなばた」という言葉が生まれていました。
ところで奈良時代になると、中国から七夕の「星伝説」と織姫と彦星に技芸の上達を願う「乞巧奠(きっこうでん)」という風習が入って来ます。
中国では古くから「彦星」は農耕に適した時期に明るく見えるので、農業の基準とする星と考えました。
そして「彦星」と天の川を挟み輝く星を「織姫星」として、養蚕や織物、針仕事の星と考えるようになりました。
また星伝説とともに、糸や針の仕事を司る「織女星(織姫星)」が輝いてよく見えるこの「七夕」の夜、技巧や芸能の上達を願って「乞巧奠」という行事も行われました。
これが日本の宮中に広まり、男性達は書の上達を祈り、女性達は機織やお裁縫の上達を願い、御供え物をする祭りとなりました。
星伝説の織女、「乞巧奠」の織物や裁縫の上達を願う織女星、そして日本の棚機女、この三者は見事に織物と祈りでつながります。
これら「星伝説」と「乞巧奠」は、日本の「棚機(たなばた)」行事と融合し、宮中では「七夕(しちせき)」と呼ばれる行事となりました。
時代が下り、宮中行事が民間にも広がっていくと、「七夕(しちせき)」という読み方は、庶民が人々が慣れ親しんでいた「棚機」の読み方である(たなばた)へと変化していったと考えられます。
「七夕」をたなばたと読むことには、内外の文化を実に上手に取捨選択し、豊かに実らせてきた日本の先人の知恵を感じます。

土用と丑の日

夏の土用は暑い盛りで夏バテしがちです。
土用餅、土用卵、土用しじみなど、夏土用には精がつく食べ物をとるようになりました。
日本人が鰻を食べ始めたのは、かなり古くからで、先史時代より食べられていたようです。
鰻がはじめて記録に書かれたのは8世紀の「風土記」です。
万葉集の巻十六には、大伴家持が吉田石麻呂の夏痩せを見て『石麻呂にわれもの申す夏痩せに良しというものぞ鰻捕り食せ』と歌った歌があります。
調理法は14世紀の「鈴鹿家記」に出てきますが、現在の調理法とは全く違うものでした。
その調理法は、鰻をぶつ切りにし、串に刺して焼くもので、その形が蒲の穂ににているから、蒲焼という名前になったと言われています。
味付けは、醤油や味噌、塩、酢などでしたが、醤油は鰻から出る脂で弾かれてしみ込まず、あまり好まれませんでした。
のちに、今のように鰻を裂いて骨を取り、串を打って焼くようになりましたが、まだ味付けはまだ味噌や酢が主流でした。
その後、千葉の野田や銚子などで作られる関東の濃口しょうゆが普及するにつれ、しょうゆ味の蒲焼が生まれてきます。
鰻のたれは、鰻屋さんでそれぞれ味付けが違いますが、基本はしょうゆとみりんです。
山椒や酒などを加えることもありましたが、次第に現在のしょうゆとみりんを合わせた甘辛いたれの味に近くなったようです。
江戸の町でも、関東風と関西風が混じって売られていたようですが、19世紀以降は関東風の味付けになりました。
この甘辛い蒲焼になると、ご飯のおかずにふさわしくなります。
それまで、蒲焼だけしか売られていなかった鰻屋や蒲焼屋に加え、「めしや」としての鰻屋が登場し、「うな丼」が生まれます。
19世紀半ばに出版された「守貞漫稿」には、「うなぎめし」の説明が書かれています。
ところで土用は春夏秋冬年四回あるのですが、なぜ夏土用で丑の日が特別に言われるようになったのでしょう?
これには諸説ありますが、代表的なものは平賀源内説です。
元々、「夏の土用の丑の日にうのつく食べ物を食べると夏負けしない」と言い伝えられ、うどんや梅干しなどが食べられていました。
鰻も「う」がつくけれど、実は鰻は、冬眠を前に身に栄養分を蓄える晩秋から初冬が最も美味しい時期で、夏はあまり食べられていませんでした。
それで、ある鰻屋が夏場に鰻が売れないで困り、源内先生に相談をもちかけました。
すると源内先生は、「本日、土用の丑の日」という大きな幟を立て、鰻を食べると薬になると宣伝しなさい、とアドバイスしたのだそう。
その結果、その鰻屋は大層繁盛し、その後は他の鰻屋も真似るようになり、「土用の丑の日には鰻を食べる」風習が定着した、ということです。
他にも諸説ありますが、味が落ちる夏の鰻を売る為の商人の知恵が、この優れたキャッチフレーズの生みの親かもしれません。
鰻は美味しいだけでなく、目によいビタミンA、疲労回復のビタミンB1、美容効果のあるB2、骨や歯を強くするビタミンDやカルシウム、老化防止のビタミンE、免疫力を高める亜鉛、さらに脂質の部分にはDHA、EPAも豊富に含まれています。
うなぎの体の表面のぬるぬるした部分にはムチンという胃腸の粘膜を保護する成分が含まれていて、どこを取っても「栄養」の「最高の健康食」です。
丑の日だけでなく是非夏は鰻を頂いて元気に暑さを乗り切りましょう。

軒(のき)と庇(ひさし)と簾(すだれ)と葦簀(よしず)

軒(のき)

軒は外壁を雨や雪から守ってくれます。
そして、真夏の直射日光が、部屋の中に注ぐのを遮ってくれます。
軒を深くすると、部屋の外側に軒下が生まれます。
縁側やバルコニーといった外部と内部の中間空間を作ることも出来ます。
深い軒が生み出す空間には、小さくても陰影の醸し出すゆとりと、涼やかさがあります。

庇(ひさし)

従来の日本の住まいには、窓の上に庇がありました。
窓庇も深い軒と同様、雨が窓から振り込まないようにする役目と、直射日光を遮る役目を果たしてくれました。
しかし、最近は窓庇を付ける住宅は少なくなりました。
費用が余分にかかるとか、すまいの外観がやぼったくなるから、というのが理由のようです。
屋根の形状にもよりますが、突然のどしゃぶりや台風などが多くなっている昨今、窓庇も付けた方がよい気候になっているように思います。

簾(すだれ)と葦簀(よしず)

簾や葦簀は、葦(よし)や細い竹を細縄や糸で編み連ねたもので、窓の外で使います。
直射日光を遮ってくれ、日除けの役目を担ってくれます。
簾は軒下に吊るし垂らして使い、葦簀は壁などに立て掛けて使います。
まぶしさや熱を遮りながらも、風は通してくれ、簡単に付けたり外したり出来ます。
窓の内側のカーテンやブラインドと共に、外側に簾や葦簀を使うことで、直射日光を効果的に調節することが出来ます。
早くから強く暑い陽射しが差す気候となった昨今、簾や葦簀は改めて見直してみるべきではないでしょうか。

おうちで楽しむ文月の風呂敷包み

何でも包んで運べる風呂敷ですが、超撥水素材なら水を弾くだけでなく、風呂敷バッグにして水を注ぐと、水が漏れることなくバケツの代わりとして使えます。
100㎝前後四方の風呂敷なら、大体6~7Lの水が運べます。
又、撥水素材は水を弾くだけですが、超撥水は通気性があり、絞るとシャワーとしても使えるので、夏の行楽にお勧めです。

ふろしきぶる風呂敷超撥水バージョン
http://store.furoshikible.com/category/water-repellent-l


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つつみ純子
お茶の水女子大学卒/風呂敷文化研究家/和文化コンシェルジュ/エコ・クッキング・ナビゲーター/福祉住環境コーディネーター2級/NPO法人徳育と人間力育成研究所アドバイザー
「日本の伝統文化を身近に再発見する」をキーワードに、風呂敷を通して、日本人の知恵や文化をお伝えしています。
又、日本古来の「年中行事」や「四季のしつらい」、「伝統食育」など、日本の生活文化を伝える講演やワークショップも展開しております。
2011年には国際交流基金からポーランド・グルジア等に派遣され、文化交流事業の風呂敷講師として、大学・政府関係機関などで風呂敷講座を行いました。
国内のみならず海外の方々へも、風呂敷を通して日本文化と日本の心をお伝えして参りたいと思い、 オリジナル風呂敷「ふろしきぶる風呂敷」と「つつみフロシキブック」を製作しました。
2020年東京オリンピックでは「大江戸オリンピックは風呂敷でおもてなし」を提唱しています。
また研究し纏めてきた「ふろしき学」が、2015年より都立で単位認定のある授業に採用され、実施しております。
学校教育の中でも、ふろしき文化をこどもたちに伝えていきたいと思っています。
「ふろしきぶる風呂敷」を活用した風呂敷文化の普及及び販売が、東京都中小企業振興公社の支援を受けることになりました。


□URL http://www.furoshikible.com/
□blog http://ameblo.jp/11264ki/
□Facebook https://www.facebook.com/junko.tsutsumi.332


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