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九月 長月のくらしの彩 長月の風物詩 「お月見のお供え」 古来、日本では光り輝く月は神そのものと考えられ、平安時代には、月を眺め愛でる行事も生まれました。 月が美しく見える中秋の頃は、秋の収穫の季節でもあります。 月に祈りを捧げる際に供えた収穫物が、次第に米から作ったお団子に変わっていったと思われます。 収穫物の中でも、米は日本人の命を繋いできた貴重な穀物です。 その米から作った上新粉で作るお団子は、人々にとって最上のご馳走であったでしょう。 ところでお団子が丸い理由は、欠けても満る月に、不老不死や豊作の祈りを込めたからとも、中国の月餅に似せたからともいわれています。 旧暦八月の十五夜は芋名月とも呼ばれ、里芋の収穫の時期でもあり、里芋も一緒にお供えをしました。 その名残なのか、関西のお月見団子は紡錘形で漉し餡をのせた、里芋を模したような形状です。 旧暦九月の十三夜は栗や豆の収穫時期なので、栗名月や豆名月とも呼ばれました。 本来は収穫を感謝してのお供えなので、お団子と共にお供えするには、稲穂を飾りたいところですが、この時期、既に稲穂は収穫してなくなっています。 そのため、稲穂が実った形とよく似たススキを代りにお供えするようになったようです。 元々、ススキは茎の中が中空で、神の宿り場と考えられていて、月の神様をお招きする依り代(よりしろ)でもありました。 又、ススキの切り口は鋭いため、厄災や悪霊から収穫物を守ってくれる魔除け厄除けとも考えられていました。 日本の秋の風物詩、「お月見」にも稲作が深く結びついていることが分かります。 長月の和歌 「雲きえし 秋のなかばの空よりも 月は今宵ぞ 名におへりける」 西行 「山家集」 秋のなかばの空というのは、八月十五日,中秋の名月の空です。 その名月の空よりも、秋深まる九月の月の方がずっと美しく見える、と西行は詠んでいます。 九月の十三夜の月見の風習は、中国にはなく日本独特のもので、国風文化が花開くに連れ、広がっていきました。 長月の色 「紫色」 風呂敷の文様と言えば唐草でしょうが、風呂敷の色として、まず頭に浮かぶのは紫ではないでしょうか? 中国の古代の五行思想では、紫は上位の正色五色でなく下位の中間色でしたが、のちに五色の上に立つ高貴な色として扱われるようになります。 律令制度と共に日本でもそれが取り入れられ、冠位十二階でも最高位の色とされました。 紫色は紫草という植物の根、紫根を染料として染めたことから、染められた色もムラサキと呼ぶようになりました。 染色には手間がかかり、限られた人しか使えず、貴重で尊ばれた色でした。 この紫根の色は大変揮発性が高く、和紙に包んでおくと、紫根に触れた部分は和紙に色が移るのだそう。 そんな風に想い人に自分の想いが移り、自分の色で染めたいという願いから、王朝の貴人たちは紫を「ゆかり(縁)」の色と呼んで愛でました。 清少納言はこの紫を尊ぶ心や風潮を、「すべて、なにもなにも、紫なるものは、めでたくこそあれ。花も、糸も、神も」と詠んでいます。 長月の文様「菊文様」 菊の原産地は中国で、奈良時代の中ごろ遣唐使によって、日本にもたらされたといわれています。 その種類は大別して、大菊、古典菊、小菊、その他新しい品種改良のものが沢山あります。 大菊には、「厚物」、「管物」、「広物」という種類があります。 厚物は、数百枚の花弁が花芯の中央に向け、うろこのように盛り上がったものです。 古典菊は、江戸中期に各地のお殿様が、保護や改良を奨励したことにより、色々な地域でその土地の菊の種類があります。 「嵯峨菊」、「伊勢菊」、「肥後菊」、「江戸菊」「美濃菊」、「奥州菊」、など日本各地で工夫されていきました。 小菊(山菊)は、その名のとおり小輪の菊で、花の型は、丁字、平弁、サジ弁など色々に変化し、花の色も豊富にあります。 人の手で丹念に育てられてこれらの菊の他、日本には中国から伝来後、野生に様々な野菊が育ちました。 風呂敷の柄にも沢山の菊が見られます。 華麗な顔も可憐な顔も見せてくれる菊柄は、春の桜と共に名実ともに日本の柄となっています。 菊文様の風呂敷 格調高い紫の地に、秋を代表する菊の花が艶やかに咲き乱れている菊文様です。 華やかな中にも秋の深まりを予感させる落ち着きのある風呂敷です。 拙ふろしきぶる風呂敷Mサイズ「紫」 <<次回のはなし 前回のはなし>>
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