そもそも、母子ハウスが必要な理由をまずはご理解いただきたい。
母子家庭である。という理由だけで、家を借りることが難しくなってしまうという現実がある。
収入面で条件を満たさないと言われる場合もあるし、保証人を頼める人がいない、というところで躓く場合もある。しかし、根底にあるのは母子家庭に対する不動産業界の根強い偏見と無理解にあると思う。
母子ハウスのポータルサイト「マザーポート」で実施したアンケートによると、84%の回答者が不動産を借りる時に不利益を被ったと答えている。自由記述の欄に記載されていたもっともひどい例はこうだ。
収入も保証人もクリアして審査が通っていたのに、最後に母子家庭であるということを伝えると、突然、オーナーが入居不可だと言っているということで、断られた。
離婚や別居に至った時、もと住んでいた家を出るのは母親側であることが圧倒的に多い。
元々、正社員として働いていて、職場に通勤できる範囲で家を探せる場合はまだ良い。専業主婦やパートタイムで働いていた場合は、まず賃貸物件を借りることは難しい。働いていたとしても、遠方への引越しを余儀なくされる場合は、家だけではなく職も一から探さなくてはならない。この場合も住居を得ることが難しくなる。
想像してみて欲しい。
「家を借りることができない」という状況を。
生活の根幹は住宅にある。
安心して、安全に住むことができる家がある。
ということは、果たして贅沢なことなのだろうか?
人として当たり前に保証されているものであるべきではないだろうか?
ここは日本である。
日本国憲法第25条にはこうある。
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
<日本国憲法第二十五条>
しかし、残念ながら住居確保に関して有効な手立ては、国の制度としてはほとんど用意されていない。用意されていたとしても、それは大いに不十分なものであると、言わざるを得ない。
だからこそ、母子家庭に対する住居の選択肢を増やさなくてはならない。
ちなみに、平成27年国勢調査による世帯構造等基本集計結果によると、20歳未満のこどもと共に生活をしている、母子のみの世帯数は754,724世帯となっている。
そのうち、こども1人の世帯が406,006世帯、こども2人の世帯が268,807世帯、こども3人以上の世帯が79,911世帯。これを単純に計算すると、193万人を超える人口が母子家庭として暮らしていることになる。
これは日本で4番目に人口の多い政令指定都市である札幌市の人口と、ほぼ同程度という数になる。
これだけの規模がある母子家庭で、少なくない世帯が「住居を確保することに困難を抱えている」状態を看過してはいけない。