和の暮らし
十一月霜月
十一月 霜月
霜月という名前の由来は諸説ありますが、霜が降りる月で「霜降月」、それが短くなり、「霜月」に、という説が有力です。
別名としては、雪がこれから降る時期で、「雪待月」「雪見月」、神様が戻る月なので、「神帰月」「神楽月」などがあります。
子どもの頃、冷えて霜の降りた晩秋の朝は、通学路でわざわざ霜があるところを歩いたものでした。
踏んだ時のサクサクという音、ふわっとした感触、吐く息が白くなるピリとした冷気、霜は清冽な冬への誘いでした。
舗装道路が増えた昨今ですが、公園や路地など、土の道路もまだ健在です。
冷え込んだ朝、ちょいと早起きして、霜の降りた道を歩いてみませんか?
霜を踏む音、吐く息の白さ、清らな冷気、日本の冬の到来が全身に伝わってきます。
立冬(りっとう)
冬の気配が少しずつ感じられてくる時期です。
暦の上では立冬から立春の前日までを冬と考えました。
新暦では11月7日頃から21日頃です。
立冬の初候(新暦11月7日~11日頃)「山茶始めて開く(つばきはじめてひらく)」
山茶花が咲き始める頃です。
中国ではツバキ科の花は全て総じて山茶と呼ぶようです。
山茶花が椿とよく似ていたので混同したのだということです。
立冬の次候(新暦11月12日~16日頃)「地初めて凍る(ちはじめてこおる)」
そろそろ霜が降りる時期です。
大地は凍えはじめ、氷が張り、本格的な冬を迎える準備の時期となります。
立冬の末候(新暦11月17日~21日頃)「金盞香し(きんせんこおばし)」
金盞とは黄金色の杯のことで、水仙の別名です。
水仙の清楚な姿にふさわしい上品でかぐわしい香りが漂う季節です。
小雪(しょうせつ)
立冬から数えて15日目頃。
北国からの雪の便りがきこえる頃ですが、まだ本格的な降雪ではありません。
そのため、小雪と名づけられたといわれています。
新暦では11月22日頃から12月6日頃までです。
小雪の初候(新暦11月22日~26日頃)「虹蔵れて見えず(にじかくれてみえず)」
次第に日差しが弱くなり、曇りが多くなります。
虹が見えることも少なくなり、見えたとしてもすぐ消えてしまうようになります。
小雪の次候(新暦11月27日~12月1日頃)「索風葉を払う(さくふうはをはらう)」
索風の索というのは北という意味です。
北から吹いてくる冷たい風が、木々から葉を次々に払い落とし、冬木立を寒々としていきます。
小雪の末候(12月2日~6日頃)「橘始めて黄なり(たちばなはじめてきなり)」
橘の実が黄色く色づく頃です。
橘は日本に古くからら自生していた日本固有の柑橘です。
常緑なことから「永遠」の象徴ともされてきました。
七五三
子供の健やかな成長を願い、三歳、五歳、七歳で行う行事です。
七五三の起源は、平安時代中頃、公家の間で行われていた三歳から七、八歳までの男女のお祝いの儀式のようです。
中世では、男女とも三歳になると、それまで剃っていた髪の毛を伸ばしはじめる「髪置(かみおき)」という儀式が行われるようになりました。
男子が五歳で袴を着け始める「袴着(はかまぎ)」、女子が七歳で帯で締めて着る着物に替える「帯解(おびとき)」という儀式も行われるようになります。
ところで七五三のお参りの日はなぜ11月15日になったのでしょうか?
その由来には、三代将軍徳川家光の袴着の儀の日であるという説や、五代将軍綱吉の袴着の日であるという説など諸説がありますが、江戸時代初期には11月15日と定められたようで、庶民もこれに倣い、七五三の祝いの行事をするようになりました。
千歳飴
七五三のお宮参りに欠かせないのが、千歳飴です。
千歳飴の千歳とは千年ということで、七五三を祝う子供への長く久しく生きて欲しいという願いから名付けられたものです。
子供たちの人生が長く続くようにと、その形状も細長くなりました。
千歳飴を入れた袋には、鶴亀や松竹梅などが描かれています。
全て長寿を象徴し、また縁起がよいものです。
又、熊手を持つおじいさんと箒を持つおばあさんの図「尉(じょう)と姥(うば)」が描かれている袋もあります。
尉と姥は高砂神社の松に宿る神様です。厄を掃き、常盤の松葉をかき集めることで、こどもの長寿と幸せを具現化した図柄なのです。
飴の色も紅白で、名前も形も色も包装紙も、長寿と吉祥の祈りにあふれた千歳飴には、子どもが健やかに成長して欲しいという親の願いが深く込められています。
今はキャラクターがデザインされたパッケージになっていたりしますが、袋にも子供の成長の祈りが込められていたことを忘れずにいたいものです。
勤労感謝の日と新嘗祭
11月23日は、戦後、勤労感謝の日と制定され、「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」日となっています。
なぜ11月23日が勤労感謝の日になったのでしょうか?
この日は戦前もまた祭日で「新嘗祭」でした。
新嘗祭の「新嘗」とは、その年に収穫された新穀で、「天皇が新穀を天神地祇(てんじんちぎ)に勧めて神を祀り、身ずからも食す」行事です。
新穀を神に勧め神を祀る行事ですので、今の勤労感謝の日の「生産を祝い」と重なります。
豊かな収穫をもたらす勤労を貴ぶ日として、国民の祭日であった「新嘗祭」は戦後、「勤労感謝の日」となりました。
紅葉を愛でる紅葉狩り
朝晩の冷え込みが激しくなると、日本の山河は紅葉で彩り濃く、艶やかに染まっていきます。
日本人は、この美しい紅葉を桜と同様、古来より愛でて来ました。
全国の広葉樹が色づく時期を結んだ線は、「桜前線」同様、「紅葉前線」として、天気予報でも毎年伝えられます。
紅葉で染まった見事な情景を楽しむ風習は、奈良時代から始まったといわれ、紅葉を詠んだ歌は「万葉集」にも登場しています。
平安時代には、紅葉を見に出かけたり、紅葉を愛でる宴も開かれていました。
江戸時代になると、庶民も紅葉を見て楽しむようになり、季節行事として、根付いていきました。
ところで、桜を見るのは「花見」というのに、なぜ紅葉を見るのは「紅葉狩り」というのでしょうか?
「狩り」というのは、普通は鳥や獣を捕らえることを言います。
ただ、「狩り」には、花や草木を探しもとめる意味もあるようで、果物の採取にも使われます。
「潮干狩り」「きのこ狩り」「いちご狩り」「蛍狩り」などにも狩りが使われています。
「紅葉狩り」もその一つなのでしょう。今でも、紅葉を集めて楽しむこともあるので、それを「狩り」と形容したのかもしれません。
落ち葉焚きと焼き芋
♪かきねのかきねのまがりかど たきびだたきびだ おちばたき 「あたろうか」「あたろうよ」 きたかぜぴいぷう ふいている♪(童謡「たきび」)
今は公園での焚火は禁止され、落ち葉焚きもほとんど見なくなりましたが、私の子供の頃には、木々から沢山落ちる落ち葉を集め、公園や学校などで、焚火をして燃やしたものでした。
風のない青空の下、近所の人のたわいないおしゃべりを聞きながら、炎を見ながら手を温めたのは、懐かしい思い出です。
そして、焚火をすると、大抵焼き芋をしてもらえるので、子どもたちは焚火の間も神妙に待ったものでした。
濡らした新聞紙にサツマイモを一本一本包み、その上からアルミホイルでしっかりくるんで、落ち葉を重ねた間に入れて焚火をすると、ほどなく焼き芋が出来ました。
落ち葉焚きで出来る焼き芋は、レンジでチンや茹でたりとは違う、実に香ばしい、そしてホクホクの焼き芋でした。
今は町中では禁止がほとんどの落ち葉焚きですが、落ち葉を始末出来、大人も子供も一緒に体験できた冬の風物詩でした。
可能であれば、大人が必ず責任を持ち、水を準備し、風や天気に注意しながら、一度は子どもたちに体験させてあげたい冬の行事の一つです。
小春日和
霜月11月の初旬は、秋晴れが続きますが、次第に朝晩は冷え込み、昼夜の寒暖の差が激しくなります。
中旬には霜が降り、山野だけでなく、街路樹も鮮やかに色づいていきます。
下旬は落葉が舞い始め、真冬並みの寒さになることもあります。
その寒さが緩んだあとの、穏やかで風もなく、まるで春のような晴れの日。これを「小春日和」といいます。
「日和」というのは、空模様、お天気のことで、また、晴れた日も意味し、そこから、何かをするのによい天気として使われるようになりました。
それでは「小春」とは何かというと、陰暦の10月のこと。今の暦では10月下旬から12月初旬です。
この時期、晴れた陽気が、春のような気分にさせてくれるので、「小春日和」と呼ばれるようになったのだといわれています。
木枯らし
晩秋から冬の始め頃、北から強く冷たく吹き付ける風を「木枯らし」と呼びます。
木の葉を吹き飛ばして、枯れ木にしてしまうほどの強い風のことで、日本で作られた漢字である国字では「凩」と書きます。
ところで、国語辞典で「木枯らし」を引くと、解説の二番目に「すりこぎをいう女房詞」とあります。
この用例には「嬉遊笑覧」という随筆の「木枯しとは葉の落たる木をすりこぎといふがごとし」が挙げられています。
北からの冷たい木枯らしが吹くと、木の葉は吹き散らされ、 葉を全て飛ばされた木は、幹を露わにされてしまいます。
その様が正に「すりこぎ」のように見えることから、凩はすりこぎを想起させるものとして、言い伝えられてきたのでしょう。
柿
柿は、中国が原産で、「古事記」や「日本書紀」に柿の名前が記されているので、日本には奈良時代には伝わっていたようです。
現在のような柿が栽培されるようになったのは明治時代からです。
柿に含まれるビタミンCの量は、日本人がよく食べる果物の中でトップクラス。
実はイメージと違って、ミカンの二倍もあるのです。
柿の鮮やかな橙色には、抗酸化作用のあるβカロテンのほか、同じカロテノイドの一種である「βクリプトキサンチン」が沢山含まれていて、発がん抑制作用があるといわれてます。
アルコールを分解してくれるタンニン、利尿作用のあるカリウムも含まれるので、酸化還元作用のあるビタミンCとの相乗効果で、二日酔いにもよいのです。
干し柿は、平安時代にはすでに作られていたようで、平安時代の法典「 延喜式(えんぎしき:927年) 」に干し柿の記載が残されています。
干し柿になると、ビタミンCは減ってしまいますが、今度はビタミンAが二倍、糖分は四倍、カロテンは三倍、そして食物繊維は十倍以上になり、栄養価満点!
ちょっと地味な果物ですが、是非晩秋のおやつにどうぞ♪
「紅葉の落ち葉柄風呂敷」タペストリー
日本の北から始まる紅葉前線が南下して全国の山野が赤や黄色に彩られていく季節です。
とりどりの色が折り重なる落ち葉に秋の終わりを感じます。