睦月の和の住まい
襖と引き戸
扉には、弧を描いて開くドア(開き戸)と、水平方向にスライドさせて開閉する引き戸があります。
日本では、大きな門は別として、住居の建具は、殆どが開き戸より引き戸が使われています。
引き戸は、開閉の大きさを調整できます。
開閉の度合いで、風や光を調整することが可能です。
開き戸に比べ、開閉時に邪魔にならないので、狭いスペースにも設置できます。
又、開き戸のドアと違い、引き戸は開閉して、隣合った部屋を繋げることも出来ます。
その上、高齢者や小さい子供でも開閉がしやすいので、まさに昨今求められているユニバーサルデザインの扉でもあります。
日本の襖は、まさにこの引き戸で、木で出来た骨組みの両面に、紙や布を張り、それに縁や引手を付けた建具です。
襖は開閉がしやすいだけでなく、取り外しもしやすい建具です。
隣合った和室は、襖を閉めればそれぞれが個室になり、襖を取り外せば繋げて大広間にすることも可能です。
このように部屋のスペースを変化させることが出来る襖は、実にフレキシブルな建具と言えます。
襖は又、単なる扉だけでなく、押し入れや天袋、地袋など、和室の多様な収納の扉としても使えます。
襖の襖紙も下地も縁も引手も、様々な種類があり、特に襖紙の図柄や素材などにより、部屋のイメージも変わります。
有名な画家が描いた襖絵を持つ襖には、装飾品や文化的価値を持つものもあります。
和室も減り、襖がある住宅は激減しましたが、日本の優れたユニバーサルデザインの扉を、改めて見直してみたいものです。
睦月のまちかど文様 桂離宮「松琴亭」の市松文様
桂離宮は17世紀の初めから中頃までに,八条宮初代智仁親王と二代智忠親王によって造られた、本庭園として最高の名園です。
その意趣を凝らした建物の中の一つ「松琴亭」の襖は、実に斬新で大胆な藍と白の市松文様です。
ところで市松というネーミングは歌舞伎役者の佐野川市松の名前が由来ですが、彼は18世紀の人です。
智忠親王が桂離宮を改築されたのは17世紀で、佐野川市松の登場より前。
市松文様という名がつく前から、藍色と白の方形を互い違いに配置した石畳のような文様は使われていたことが分かります。
睦月のふろしき 市松柄
市松柄は前述の通り、古来より愛されてきた文様です。
今年2020年の夏は、東京でオリンピックパラリンピックが開催されますが、この東京2020の公式グッズとして作られた風呂敷は、藍色と白の市松文様です。